ある子供の日記


今日はお天気がとってもよくて、気持ちよかったです。
新しい小学校でとても緊張したけれど、楽しかったです。
お父さんとお母さんは、僕を先生の所へ連れて行ったあと、何か話をしていました。
お父さんもお母さんもうれしそうにしていました。
先生もやさしそうな人でした。
僕は違う学校から転校してきました。
大人の事情があるんだって。
前の学校のお友達、元気にしてるかな。
ほんとうは、転校なんてしたくなかったけど、仕方ないよね。
わがまま言ったら、きっとお父さんやお母さんが悲しむよね。
だから、これは僕だけの秘密。
あんまり遅くまで起きてると怒られちゃうかも。
これでもお母さんはきびしいんだ。
テイネイに話しなさいって。
もう寝ます、おやすみ。

今日はたくさんお友達が出来ました。
女の子も男の子もいっしょに。すごくうれしかったです。
お勉強も、知らないことばかりで楽しいです。わくわくします。
いっしょに校庭へ出て遊ぶのも楽しいです。
皆でいっしょに食べる給食も楽しいです。
もしかしたら、お母さんの料理よりもおいしいかもしれないと思いました。
そういったらお母さん怒るかな。
今日の朝ごはんは、野菜サラダとベーコンエッグでした。
とってもおいしかったです。
でもお母さんとお父さんはちょっと疲れてるみたいです。
昨日いっしょに学校へ行ってくれたからかな。
それともお仕事大変なのかな。
頑張ってね、お父さん。 僕、オウエンしてるから。

今日は学校がお休みの日でした。
お母さんは昼間買い物に行きました。
僕は連れて行ってもらえませんでした。
お菓子をたくさん買うから駄目なんだって。
ちゃんとお勉強もしたのに、何だか退屈でした。
一回だけ、玄関のチャイムが鳴りました。
お母さんかお父さんが帰ってきたのかと思って開けました。
そうしたら、しらないおじさんが立っていました。
お父さんかお母さんはいるかい? と聞かれたので、いません、と答えました。
そうしたらおじさんは、じゃあこの事をお母さんに伝えてくれるかい? と言いました。
はい、と僕は元気よく返事をしました。
そしておじさんは帰っていきました。
これでいいんだよね。
ちゃんと僕レイギ正しくできたよ、お母さん、お父さん。

今日も日曜日で学校はお休み。
お父さんは今日も会社でお仕事でした。
お母さんはのりを使っていました。
昨日、おじさんが来たことを教えたら、とっても怖い顔をしました。
そしてどこかに電話を掛けて、しばらくしたらのりを使っていました。
フウトウを作っている、ないしょくというお仕事らしいです。
お母さんも、お父さんもお仕事大変です。
僕は僕のお仕事頑張るね。
子供は勉強がお仕事だって前に言ってたよね。
ちゃんとお家でも学校でも勉強頑張ってるよ。
今日の晩御飯は、お味噌汁と焼き魚と煮物でした。
ちょっぴり、魚のしっぽがコゲていました。
少しだけ苦かったです。でも、我慢して食べました。

今日は久しぶりの日記です。
今日の朝ごはんはトースト一枚でした。
少し足りなかったです。
最近、お母さんとお父さんはよくため息をついています。
お仕事が大変みたいです。
僕がテストで満点を取ったのに、紙を見せても褒めてくれませんでした。
ちょっとお母さんのキゲンが悪いみたいです。
ゆっくり休んでもらいたいなと思いました。
そうだ、今度お母さんの方をたたいてあげようと思います。
そしたらまたいつもの元気に笑うお母さんに戻るよね。
お父さんも疲れているみたいです。
でも、お仕事から帰ってくると、僕の頭を大きな手でなでてくれます。
とってもうれしいです。
僕はもうそろそろ寝ようかな。
僕よりもお父さん達の方が遅く起きているみたいです。
うっすらと廊下のドアから明かりが見えるからです。
おやすみなさい。

今日はとっても怖いです。
お母さんとお父さんが怖いです。
一日中ケンカしているみたいです。
どなり声が僕の部屋にまで響いてきます。
朝も、昼間も、夜も。今も。
とっても怖いです、恐ろしいです。
そんなにお仕事大変なのかな。
そんなに疲れているのかな。
僕に何が出来るのかな。
出来ることはあるのかな。
早く仲直りして欲しいです。

今日はほっぺが痛いです。
ドアの間からケンカをのぞいていたら、お母さんにぶたれました。
お母さんの手の後がついて、真っ赤になって、ひりひりして痛いです。
さっきお父さんが冷たいタオルを持ってきてくれました。
ありがとう、お父さん。
でも、なんだかケンカはすごいことになっているみたいです。
僕が寝ようとしてふとんに入った後も、食器が割れる音が聞こえます。
色んなものを投げているみたいな音。
そんな音は、怖いです。
真っ暗な部屋で大きな音が聞こえると、びくっとしてしまいます。
僕は最近朝も昼間も学校にいるときも眠いです。
でも、寝たら先生に怒られるから、眠るのはガマンします。

朝起きたら、今日はお父さんが朝ごはんを作っていました。
お母さんも今日からお仕事に行くらしいです。
今日の朝ごはんは、目玉焼きとトーストでした。
おいしかったです。
それからお父さんはお仕事へ行きました。
僕は学校へ行きました。
学校から帰ると、お父さんが先に帰っていました。
お母さんはまだ帰っていませんでした。
いつ帰るの? とお父さんに聞いたら、お母さんはまだ帰らないよといわれました。
なんでも、シュッチョウなんだって。遠いところでお仕事しているらしいです。
お母さん、おつかれさま。
僕は、元気だよ。
今日の晩御飯には、久しぶりにお肉が出ました。
とってもおいしかったです。

今日もお母さんは帰ってきませんでした。
お父さんは帰ってきました。
すごく疲れた顔をしていたけれど、僕に笑いかけてくれました。
うれしかったです。
それから、僕の頭に手を乗せてこういいました。
明日、もしかしたら怖い人がくるかもしれないけれど、部屋に隠れていなさいって。
お父さんは少しいなくなるけれど、ご飯は冷蔵庫の中に入ってるから、それを食べなさいって。
なんだかよくわからないけれど、僕はうなずきました。 
僕はいい子だから、お父さんやお母さんのいうことはちゃんと聞くんだ。
今日の晩御飯は、とても豪華でした。
お肉に、焼き魚に、デザートのケーキまでありました。
とってもおいしかったです。

今日はお休みの日です。僕は言われたとおりに部屋に隠れていました。
ベッドの下に隠れなさいといわれてたけど、狭くて入れませんでした。
変わりに、洋服を入れるタンスの中に入ってカギを掛けました。
怖い人には会いたくないからです。
しばらくすると、お父さんのいる部屋の方から大きな物音がしました。
大きなどなり声もしました。
まるでお父さんとお母さんがケンカしているみたいな。
しばらく大きな音は続きました。
僕はとっても怖くて、タンスの中でがたがた震えていました。
そして、気づいたら眠っていました。
眼が覚めたときは夜でした。
お父さんの部屋に行ってみたけれど、誰もいませんでした。
本とか、書類とかが床に散らばっていました。
赤い斑点模様のカーペットが敷いてありました。
ちょっとお魚のにおいがしました。
僕は一人でご飯を食べて、お風呂に入って眠りました。

  あれからずっと学校へ行ってません。
お父さんもお母さんもまだ帰ってきません。
学校の先生が何度か来たけど、ムシしました。
お母さんやお父さんが帰ってくるのを待っているからです。
そんなにお仕事大変なのかな。
そんなにシュッチョウは大変なのかな。
ちょっとだけ心配です。
ちょっとだけ不安です。
ちょっとだけワケがわからない怖さがあります。
でも、僕は待っているからね。
僕はいい子だから、ちゃんと待ってるんだ。
お母さん、お父さん、僕は元気です。

今日はちょっと困ったことが起こりました。
冷蔵庫のごはんがなくなってしまいました。
どうすればいいのでしょう。どうしたらいいのかな。
僕はお金がどこにあるのか知らないです。
でもお父さんやお母さんはいないです。
僕は、自分のお小遣いでお菓子を買いに行きました。
たくさん買ったけど、食べるのは少しです。
いつ帰ってくるのかわからないからです。
起きているとおなかがすくので、もう寝ます。

お菓子がなくなりました。
もう食べるものがないです。
でも水があります。
水があれば大丈夫だと思います。
お腹がすかすかしているけれど、もう寝ます。

僕はベッドのなかで書いています。
起き上がるのがめんどうだからです。
一ヶ月くらいするけど、まだ二人は帰ってきません。
いつになったら帰ってくるのかな。
僕、ちょっとつかれてきました。
待っているのにつかれました。
もしかしたら、待てないかもしれません。
その時はごめんなさい。

じっと自分の指を見ています。
僕の身体は細くなっていくのに、まんまるな指です。
僕はあまりにお腹が空きすぎたので、ちょっとだけかじってみました。
少し痛くて、怖かったです。でも。
赤い血が出て、甘かったです。チョコレートを食べているみたいでした。
かじった指は、おいしいお肉と同じ味がしました。
とってもおいしいお肉でした。

お母さん、お父さん、僕はなんとか生きてます。
早く帰ってきてね。食べ物がなくなる前に。
早く帰ってこないと、僕がいなくなっちゃうよ。


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