バベル




 単調で、退屈で、つまらない授業を私は教室で聞いていた。
生徒のほとんどは惰眠を貪り、教師の話などは聞いていなかった。
やる気というものが欠如した教室という空間の中。
まばらに空席が目立つ教室。
クラスメイトの机の中からは、色々なものがはみ出していた。
携帯電話、ノート、携帯ゲーム機にお菓子。教科書などほとんど見えない。
暇を潰そうにも、退屈の代わりとなるような楽しいものはなかった。
私は頬杖をつきながら、窓の外を眺めてみた。窓際の席だから、景色は眺めやすい。
最も、私は片目に眼帯をつけていたから、あまりよく見えなかったけれど。
外は、今にも空が割れそうな……どんよりとした、重い曇り空。
まるで、あの日みたいだと思った。
科学では説明できない、不思議なものがあるのだと知った日。
退屈を終わらせることができると知った日。
私がバベルに出会ったのは、今日みたいな、澱んだ黒い曇り空の日だった。

 私はその日、自分の部屋で勉強をしていた。
曇り空という天気のせいで、部屋の中もじめじめとしていて。
湿気が肌に纏わりついて、決していい気分じゃなかった。
楽しみなことがひとつだけあったのだけれど、この天気のまえでは楽しみ半減だった。
普段サラサラの髪は、ぐんにゃりと重たく、気持ち悪く。空気は澱んでいた。
指で捲る参考書のページも心なしか柔らかく感じていた。
天気に影響されるかのように、私の気分までもが鬱々としていた。
なんで勉強なんかしているのだろうかと。湿気の多い日は、一日中お風呂に入っていたい気分なのに。
湯船の熱い湯気は、湿気た空気とは違く清々しくて気持ちがいい。
深いため息をついて、目の前のノートに問題を書き写していた。
だいたい、私は勉強なんかをしなくても平気なのに。
ちまちまと問題集を解かずとも、テストでいい点が取れることは実証済みであって。
それなのに、どうしてこう不毛な勉強をしているのかというと。
期末のテストのときに、一度も自宅では勉強をしないでテストを受けてみたことがある。
そんな状態でテストを受けたにも関わらず、結果は――
ほぼ満点に近い状態だった。
もちろん、そのことを私は両親に報告した。
勉強などしなくても、学校生活に問題がないということを、証明したくて。
それなのに、両親は何故か激怒した。
なんで勉強をしなかったんだ、とそれは凄い怒り方だった。
父親には三発も握りこぶしで殴られた。その後は三日間腫れていた。

 それ以降、私は親に何も言わなくなった。何故なら、無駄だとわかったから。
私の両親は、結果よりもそれにいたるまでの、過程を大事にするのだと。
小学生の頃とは違って、高校生にもなれば、勉強の方法も身についてくる。
無駄に勉強するのではなく、効率的に行えるというのに。
過程など、どうでもいいと思った。終わりよければすべてよし、っていうじゃない。
私と両親の考え方は違う、ただそれだけなのだと。
両親は勉強していることさえ判れば何も口出ししてこなかった。
たとえば、ノート一枚分さえでも見せれば、納得する。
同じ問題が繰り返されているとも気づかずに。
なんて簡単な人間なんだろうと思った。
同時に、そんなものなのかと、少し落胆した。
課題を終わらせるだけ終わらせて、何をしようかと考えていた時……
玄関のチャイムの音が聞こえた。
ずいぶん前から入荷待ちだった、人気のバッグ。私が楽しみにしていたものが来たようだった。
静かに喜びながら、階段を駆け下りて、玄関を開けた。
うるさい音が響いたけれど、両親がいないから平気だろうと思った。
最近は出張ばかりで、ほとんど家にはいない。私は生活費さえもらえればよかった。
嫌な天気の中、車を運転してきた配達員の顔は、ひどく疲れて見えた。
包みを抱えながら、家の中へと戻ろうとした時だった。
――何か、視界に映る黒いモノが見えた。私はそれに近寄ってみた。
家の門の、すぐ側に落ちている、黒いモノ。ゴミ袋かと思ったが、拾ってみると違った。
それは、黒い本だった。
本みたいだが、学校の教科書サイズで、さほど大きくはなかった。さらには。
好奇心からページを捲ってみたが、空白しかなかった。
こんな空白だらけの本、どう考えても今の配達員の落し物とは思えなかった。
私はじっくりと見てみたくて、部屋へと持ち帰った。
今思うと、呼ばれていたのかもしれなかった。

 勉強机の上に置かれた、黒い本。 私は椅子に座りながら、じっと表紙を眺めていた。
なんでこんな変なものがあんなとこに落ちていたのかが気になって。
役に立ちそうもない、空白だらけの本なんか。
色々考えては見たものの、別にいいかということになった。
落ちていた本を、私が拾っただけ、ただそれだけよね。
空白のページに何か書いてみようか……と考えていた時だった。
「さっきから、何をじろじろと見ている」
何処からともなく、不意に声が聞こえてきた。
テレビをつけっぱなしにしていたかと、見てみるも、小さな画面は黒色だった。
この部屋には私一人しかいないのに。
「私を探しているのか? ならば私はここだ」
また、声が聞こえた。低い、落ち着いた声。
声変わりをした男性の声、といえばわかりやすいかもしれない。
私の視線はしばらく彷徨って、結果的には、机の上の黒い本へと行き着いた。
まさか本が喋るなんてないだろう――と思いながらも、視線は本を凝視していたら。
「ふん、気づいたか」
目の前の本から、先ほどの男性の声が聞こえた。本当に本が喋っていたのか。
ある種の感動を覚えつつも、私は尋ねてみた。
「あなたは、誰? ……違うな、あなたは何?」
「まずは人に名前を聞く前に、お前が名乗ったらどうだ」
なんだかむかつく返事が返ってきた。気に入らない喋り方。
でも、好奇心の方が勝ってしまって。
「私は……夏織」 名前を呟くと、その本は答えた。
「私は、バベル、だ」

 嫌な天気の日に出会った、妙な黒い本。しかも喋る。名前は、バベルというらしい。
名前なのか、本のタイトルなのかはわからないけれど。
バベルは、所有者の願いを叶えるためのものらしい。
現実的には不可能でも、不毛でも、どんな望みでも叶える、といっていた。
所有者が満足し、バベルが消えるとき、所有者の記憶は消えてしまうらしい。
バベルの存在、使用したこと、その関連事項。そこだけ、ぽっかりと忘れさせると。
空白の時間には、偽の記憶を埋め込むらしい。
その所有者が満足すると、バベルは消えてしまうらしい。
望みを叶え終われば、二度と同じ人とは会うことはないだろうとも。
願わない限りは、と。
ただ、願いを叶えるのには、何らかの代償が必要らしい。
いわゆるペナルティであり、等価交換なのだと。
何かを望むのならば、それ相応のものを失わなければならない。
これは、もっともだと私は思った。
それが、バベルに定められたルール。
私は、とても日々に退屈していた。うんざりしていた。
そして、私はバベルを使った。

「ねえ、バベル」
「何だ」
「さっそく、願いがあるのだけれど?」
「私はその為のモノだ、言ってみろ」
まずは実験的なものからにしようと考えて……
「そうね……とりあえず、お金が必要ね」
お金が必要だといった途端、軽くバベルが笑った。
笑ったといっても、声が聞こえただけなのだが。
「やはりお前も同じだな。誰もが必ず願う」
「お金がなきゃ、何もできないわよ。後ね」
「まだ何かあるのか?」
「その場限りではなくて……ずっと続くような感じ」
「継続的な、永久的な資金の充実」
ああ、そう。それが私は言いたかった。バベルは、頭はいいらしい。
「代価はなにをもらう?」
「そう、代価。どんなものにすればいいの?」
「お前にとって、大事なものを」
私は、さっき持ってきた包みを指差しながら話す。
「このバッグなんて、一応値段は高いけれど」
「値段の問題ではない」
値段は意味を持たないらしい。あくまでも私にとって大事なもの、それを選べといわれている?
少し悩んでから、ベッドサイドにおいてある、熊のぬいぐるみを手にしてみた。
「それは何だ?」
「私の祖母が、くれたもの。私がくれたお祝いにね」
「その人間は?」
「え? 祖母はもういないわよ。私が生まれた、すぐ後に死んでしまった」
祖母が私に買ってくれた、熊のぬいぐるみ。祖母は、写真が嫌いな人だった。
私にとっては、祖母がいたという証明になるものなのかもしれない。
「ほう……それでいいだろう」
「こんなのでいいの?」
ぬいぐるみ一つで、願いが叶うというのだろうか。なんだかアンバランスな気が……
「それは、祖母とやらがくれたのだろう」
「ええ」
「なくなれば、祖母のことは忘れるだろう」
「たぶん。記憶なんて、時間が経てば忘れてしまうしもの」
「だからいいんだ。よかろう、お前にとって大事なモノ、確かにもらった」
バベルがそういうなり、私の手の中からぬいぐるみが消えた。
ゆっくりと透けていくように、なくなってしまった。
まだ、生地の感触は残っているのに。
「…………ぬいぐるみは、何処に行ったの?」
「私の中だ」
「中? バベルは本でしょう」
「私のページの中に書かれている。普通は見えぬがな」
「誰なら見えるの?」 「さあな」
それっきり、バベルは黙ってしまった。
誰がいったい見ることができるのだろう。
バベルは人間に作られたのかは、わからないけれど…… カミサマなら、見えるのだろうか。
「ええと、バベル? さっきの説明をして欲しいのだけど……」
「説明ならもうした」
「違うわ。資金の充実についてよ」
「だから、私が叶えたのは、充実という可能性。それだけだ」
可能性……つまり、確定してるってことなのだろうか……
「後は、自分でやれってこと?」
「そうだ」
「面倒ね」
「物理的法則を無視することはしないからな。くじでも買うがいい」
面倒くさいと思いながらも、その日はインターネットで宝くじを購入した。
毎週抽選が行われている、簡単なもの。そしてその結果。
大金が当たってひどく驚いた覚えがある。
同時に、バベルは本物なのだと実感もした。

 次の日に願ったのは、クラスメイトのことだった。
先輩後輩からも疎まれて、嫌われているやつ。私の隣の席だった。
「バベル、次は……」
「お前は、随分と欲深いのだな。大抵は、一つ目でやめるが」
「もったいないじゃない、利用できるものは、使わないと」
「合理的だ。で、願いとはなんだ」
「クラスメイトに、消して欲しい人がいる」
「消すとは、殺すということか?」
ああ。消すにも色々あるのを忘れていた。どうしよう――。どれが一番いいのだろう。
私はほんの少し悩んだ。
行方不明、事件に巻き込ませる……ああ、面倒。
「いなくなれば、何でもいいわ」
「対象の、写真などはあるか?」
「写真? たしか、この間のが――」
本棚をガサガサと漁り、アルバムから写真を一枚抜き取り、バベルに見せようとして。
「バベル、何処に置けばいいの。何処に目があるのかわからない」
「被せればいい」
被せる……表紙に目でもついてるんだろうか。疑問に思いながらもとりあえず、被せた。
「どれだ?」
大勢の中から、一人を指差した。
「これ一人か?」
私は、頷いた。いなくなるなら、そいつだけでいい。
「代価は?」
「今回は、もう決めてあるの」
「ほう。なんだ」
「私のね、右目はどうかな?」
「それは、片目の視力を失うことを意味するが」
「もちろん、わかってるわ」
「それほどの価値が、先ほどの人間一人にあると?」
「ええ。目障りだもの。消えてくれるなら、片目くらい」
「そうか。承知した」
片目でも、十分に人は生きられる。問題なんか、感じない。
嫌な奴がいなくなってくれるのならば。今だけでも。
そして私は気になっていたことを聞いた。
「ねえ、目はどうやって取るの? 抉るの? 痛くないほうがいいわ」
「そんなことか……瞬きをしろ」
「なんで?」
いいから、と促されるままに、ぱちりと一回瞬きをした。
次に瞼を開いた時には、右目が見えなくなっていた。片目だけ、真っ暗になった。
「鏡でも見てみろ」
私はバベルに促されるがまま、手鏡を引き出しからだし、自分の顔を映してみた。
左目には、しっかりと眼球があった。
右目があった場所には、ぽっかりと穴が開いていた。
穴というよりは、真っ黒な空洞が。
数秒まえには、そこには眼球が収まっていたはず。
一目見て、黒いと思ったが、よく見ると黒色ではなかった。
肉の色とでも言うのだろうか。赤黒い色だった。
じいっと見つめていたら、穴から血が流れ出てきた。
私の頬を涙のように伝う、赤い雫。
血は確かに出ているのに、痛みはまったくなくて。
とりあえず、ガーゼと眼帯をあててから、その日は眠りについた。
次の日、学校へ行くと、その人は欠席だった。
次の日も、その次の日も。学校へは、二度とこなかった。
バベルは、また願いを叶えてくれた。

 憂鬱な空を眺めながらの追憶は、音の外れたチャイムの音で中断された。
気がつくと、いつの間にか授業が終わっていたようだ。
帰りのホームルームに適当に参加し、家路へとついた。
授業が終わった学校なんかに、用なんてない。

家につくと、いつものように鍵を開けて中へ入った。
両親は、最近はほぼ毎日家にいない気がする。
まったく、役に立たない大人だ。
階段を上って、ドアを開ければ私の部屋。
机の上には、いつものようにバベルが置かれていた。
「ただいま、バベル」
「…………帰ったのか」
最近は、帰ってきてからは、バベルに挨拶するのが日常になっていた。
律儀にも、この本はちゃんと返事をしてくれるものだから。
「今日もつまらなかったわ」
「金はあるのだから、何でもできるはずだが」
「学校でお金使って、何が楽しいのかわからない」
「では、満たされたか?」
「まだ。後二つだけあるわ」
「ほう」
まだ、叶えたいことが二つだけある。
他はどうでもいいけれど――それだけは、叶えておきたいことが。
それさえ叶えば、もう終わり。望むことなどは何もないの。
「でも、今日でたぶん、最後になる」
「言ってみろ」

「あのね――父親を消して欲しいの」
「それはまた、大胆だな」
「だって、もういらないもの」
「…………」
「お金はあるし、生活には不自由はないわ。もう、保護者はいらないのよ。
 両親なんて、あとはひたすら年老いていくだけ。面倒見るのは、嫌よ」
「代価はどうする?」
「代価は、母親でどうかしら?」
「まあ、代価としては普通に考えれば十分だろう」
「何よ、その普通って」
普通。摩訶不思議な本に、普通なんていまさら、通用するのだろうか。
別にあんな親、邪魔なだけだから、何も問題はないのだけど。
「一応、お前の生みの親だろう?」
「ええ。唯一無二の、私の母親よ」
「ならばいいだろう。だが、今一度問おう」
「問題はないわよ?」
「親がいなくとも、平気か? 本当に」
「もちろん。後悔なんてしない」
「そうか。お前の親は今、出かけているのだったな?」
「そ。出張らしいわ」
「お前の親は、二度と戻らぬだろう。永久にな」
「そう。ありがとう、バベル」
「これで満足か?」
「残念ね。まだ、一つだけあるのよ」
「ならば、言え」
親がいなくなり、生活も保障された。退屈は、一時的には紛れた。
平凡から、非凡へ少しだけ傾いた私が、最後に望むこと。
叶えられるかどうかは……わからないけれど。

『                』

願いを口にした後、静寂が部屋を支配した。
「その願いは……叶える事はできるが、代価はどうする?」
「ん、代価か――私の幸せなんてどう?」
「その意味を理解しているか?」
「もちろん」
幸せなんて、どんな形かわからないもの。誰もが幸せになれるわけでもないの。
幸せなんてもの、必要ないわ。退屈なだけ。幸せなんかよりは、退屈を紛らわすものが欲しい。
幸せになれないから、不幸というわけでもないのだから。
「人生の選択になるぞ。また、取り消しは効かない」
「大丈夫。幸せなんて、いらない」
「ならば、その願い――叶えるとしよう」
「これで終わりね。忘れるんでしょう?」
「ああ」
「それじゃあね、バベル」
その日は、バベルに別れを告げて、私は深い眠りへとついた。

 私は、両親が出張から帰ってこないので、捜索願をだした。
仕事で出かけてから、ずっと帰ってこないのだと。
確か、重い曇り空の日――あれから、帰って来てない気がする。
何故なのかわからないけれど。
私は、もう二度と帰って来ないのがわかっていた。
私が、そうしたような気がしていて。
もちろん。私が両親を殺したわけではない。
ただ、いなくだっただけ。それだけなのだと、理解していた。
両親がいなくなってから、変わった事はたくさんあって。
一つは、お金回りがよくなったこと。
宝くじとか、懸賞とか、高確率で当選するようになった。
おかげで、生活には何不自由がなくなった。むしろ、前よりも裕福になっていた。
学校生活も、楽しいことばかりになった。
理由は、私が嫌いな人が、最近学校にまったく姿を現さないから。
行方不明だとか、殺されたとか噂されている。
本当の、真実は、私は知らない。関与していないもの。
だから、とても楽しい。
ちょっと眼帯のせいで、黒板が見づらいのだけど。
しょうがなわよね。あれは私のせいだったんだから。
幼い頃、交通事故にあってしまった時。
私が地面に叩きつけられたとき、私の右目には、木の枝が突き刺さってしまったから。
眼球は見えないけれど、残すこともできるといわれたけれど――私は拒否した。
それ以来、ずっと眼帯のお世話になっている。
黒く、暗い空洞を見ると、何か懐かしい気持ちになるの。
毎日が薔薇色というわけではないけど、嫌なことなんて、全然なくて。
それでも、不思議なのは。
不自由はないのに、何か満たされない感覚だったこと。
変な、奇妙な感覚。

 曇り空の日、私は部屋で読書をしていた。
黒い革張りの、本。
中身は英語で書かれていて、少し難しいもの。
でも、親に勉強を強要されることもないのだから、問題はないわ。
ただ、難点なのは。
片目で読むから、ひどく目が疲れること。後は――お腹が空くこと。
いったん空腹を感じてしまうと、ごまかすことは難しくて。
私の頭の中には、最近聞いた話が巡っていた。
なんでも、近くに新しい飲食店ができたらしい。
店内もお洒落で、値段も安く、料理の味もそれなりらしい。
窓の外を見ると、今にも割れそうな、曇り空。
でも、時折雲の切れ間から、微かに太陽の光が差し込んでいた。
これくらいの天気なら大丈夫、と勝手に決め付けて私は着替えることにした。
お気に入りの服を手早く身に纏い、愛用のバッグに財布をいれて、玄関へ。
鍵をしっかり閉めてから、郵便ポストへと向かった。
無駄なダイレクトメールや、広告などが大量によく来るようになった。
だから、こまめにチェックをするのが日課になっていた。
オレンジ色という珍しいポストを開くと。

――黒い本が入っていた――


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