w 眼帯の下には嘘を

四夜




 その日は、朝から雨が降っていた。
 普段よりも少し遅く目覚めた私は、部屋で着替えをしていた。
 窓の外は大雨で、人気がなく静かだった。
 テーブルの上を見ると、書類が置いてあった。
 恐らくは、今夜の仕事の内容だろう。
 マスターが部屋に置きにくるなど珍しい。
 軽く書類に眼を通してから、階段を降りていった。
 階段も終わりに差し掛かり、ソファーがちらりと見えた時。
 悲鳴のような声と共に、重いものが倒れるような音がした。
 朝から騒がしい……何かあったのでしょうか。
 残りの階段を飛び降りると、事務所に顔を出した。
 そこには、倒れているシアと、割れた食器が散乱していた。
 さらに、それを遠めに眺めているマスターがいた。
 とりあえず私は彼に挨拶をすることにした。
 この状況を見ればなんとなく察しはつく。
「おはようございます、マスター」
「ああ、お早う御座います、ルナさん」
「おはようございます……ルナちゃん」
 倒れたままのシアからも返事が返ってきた。
 私は倒れているシアに近寄り、引っ張り起こした。
 ありがとうございます、と言って食器の掃除を始めたシア。
 遠い眼をしている彼に問いかけてみる。
「何があったのですか?」
「シアさんが、食器を割ってしまったのですよ」
「転んだのですか?」
「ええ。何もない所で上手に」
 それは嫌味なのだろうか。
 機械人形自体は重いから、あんなにも凄い音がしたのだろう。
 何もないところで転ぶのも凄いことだとは思う。
 派手な音のわりにどこも破損していないのは、やはり人形らしい。
 てきぱきと破片を片付けたシアがこちらに寄ってきた。
 彼に一応報告をしているようだ。
「終りました〜割れるなんて、びっくりしちゃいましたよ」
「私は貴女が転んだ事に驚きましたよ。メンテナンスしましょうか?」
「いえいえ、そっちには問題ないと思いますから、大丈夫ですよ」
 結構な枚数の皿が割れていたようだが、それはいいのだろうか。
「割れた食器は平気なのですか?」
「ああ、大丈夫ですよ。私個人の物で、おもてなし用ではないですから」
「あう……すいませんでした」
 とにかく、次は転ばないようにした方がいいと思います。
 今回よりも大事な物が壊れてしまいそうな気がした。
「じゃあ、あたしは掃除してきますね……調理場の」
 そういってシアは調理場に引っ込んでしまった。
 もしかして、皿を片付けただけで、まだ捨ててないのだろうか。
 なんというか、仕事熱心だと思う。
 私は、とりあえす彼に尋ねることがあったのを思いました。
「マスター、今は何かやることがありますか?」
「そうですねえ。依頼はありましたけど、夜で結構ですから……ないですね」
「そうですか。最近、昼は何もない気がします」
「いいじゃないですか。平和という事ですよ」
「戦争の後など、そんなものなのでしょうか」
「そういうものですよ、ルナさん」
 さて、どうしようか。
 まだ昼にもなっていない時間帯。
 依頼は夜行うのが普通だから……やることが何もない。
 シアは掃除をまだしているようだし、彼はソファーで寛いでいる。
 どうやら書類仕事も終わってしまったらしい。
 散歩……なども雨では行く気も起こらない。
「マスター」
「はい、何ですか?」
「やることがありません」
 聞くなり彼は苦笑した。
 おかしいことは言ってないはずなのだが。
「落ち着きがないですねえ。本でも読んだらどうですか?」
 そういって細い指が本棚を指した。
 正直あまり書物に興味はないのだが……仕方がない。
 ソファーに座って本を読もうとした。
 すると、事務所の扉をノックする音が聞こえた。
 読んでいた本から顔をあげ彼が扉を見た。
「おや、お客様ですかね」
「あたしが出ます〜」
 調理場からシアが出てきて、扉へと向かった。
 今度は、どちらの依頼なのだろうか。
 シアが、扉を開けて応対している。
「え、えと、お客様ですか……」
「ここの……用……」
 何故か小声でひそひそと話をしている。
 しばらくすると、シアが戻ってきた。
「お客様でしたか?」
「はっ!? いえ、ちょっと違うみたいですよ?」
「シアの知り合いなのですか?」
「ええ? あ、あたしの知り合いなんかじゃないですよ?」
 何だか妙に否定しているような気がします。
「それで、誰だったんですか?」
「アル様に、用があると言っていましたよ?」
「私、ですか?」
 彼の、知り合い? 今まで尋ねてきたことはない。
 彼を見ると、何か考えているような顔をしていた。
「お客様はいま何処です?」
「えと、入り口にいますよ。扉の前辺りにいます」
 ソファーから立ち上がると、彼は扉へと向かった。
 私のいる位置からは、彼の姿しか見えない。
「お客様ですか? 私に用というのは……貴方」
 途中で、彼の言葉が止まった。
 やはり、知り合いだったのだろうか。
 しばらくの沈黙の後、男が中に入ってきた。
 その横には、彼がいる。
「久しぶりだな、アル。ここがお前の仕事場か」
「まったく。貴方はいつも突然なんですから……」
 男の横では彼がため息をついている。
「ええと、マスター、こちらの方はいったい……?」
「ああ。こいつは私の知り合いです、一応」
 ひどいな、とぼそりと男が呟いた。
 何か、面倒な事が起こりそうな気がした。

 どうぞ、とシアが男に紅茶を差し出した。
 男は無言で受け取り、会釈した。
 なんだかさっきから、シアの行動に落ち着きがない気がする。
 男は紅茶を飲むと、いい香りだな、と言った。
 ぎこちなく、ありがとうございます、とシアは言った。
 ……妙だ。しかし、今問題なのはそこではないだろう。
「それで、マスター、こちらの方は?」
「ああ。そうでした。うっかり忘れてしまう所でしたよ。一応紹介しておいた方がいいでしょう」
 なんだかマスターにしては、ぞんざいな扱いをしているような。
「彼は、ルイです。学生時代の、まあ知り合いです」
「ルイ様、ですか?」
「正確には、ルクロディ=エルフィスだがな」
「承知いたしました」
 どうやらマスターが教えてくださったルイというのは、通称らしい。
 丁寧にも自分自身でフルネームを名乗った。
 私は男の方を見た。
 淡い金色の髪で、ショートカット。
 瞳の色は、珍しい紫色だ。左目には眼帯をしている。怪我でもしたのだろうか。
 茶色のコートを身に着けている。少し変わったデザインだ。
 見た目では、大体マスターと同じくらいだろうか。
 失礼に値しない程度に男をみていると、シアがぽつりといった。
「あの、アル様……今日はあと何かありますか?」
「いいえ、ないですよ。何か用事でもあるのですか?」
「ちょっと用があるの思い出したので……失礼しますね?」
 そういうとシアは、すぐさま事務所を出て行ってしまった。
 そんなにも急ぎの用なのだろうか。
「逃げるように帰ったな」
 男がそう漏らした。確かに、凄いスピードではあったが。
「それにしても、アル様か? いいご身分だな」
「うるさいですよ、ルイ」
「事実だろう?」
「それで、貴方はいったい何の用です? この場所は教えていなかったはずですが」
「様子を見に来ただけだ。仕事を始めたなら教えてくれればいいものを」
「別に貴方に教える必要はないでしょう?」
「いいじゃないか。俺は退屈しているんだから」
 話をしているマスターの顔はうっとおしそうだ。
 知り合いのわりには、随分と仲がよろしくないようだが……
 それにしても……と男が言う。
「相変わらず、女顔だな」
「貴方に言われたくありませんよ、ストーカー男」
 なんだろうか、この険悪な雰囲気は。
 お互いに言っていることが危険な気がする。
 ストーカー男というのも気になるが……
 どうしたらいいかわからなかったので、話題を振ってみることにした。
「あの、ルイ様?」
「なんだ」
「マスターの学生時代は、どのような感じだったのですか?」
 マスターの顔が、きょとんとしたものになった。
 私がこんなことを尋ねるとは思いもしなかったのだろう。
 私はマスターのことを何も知らないから。知っておいて、損はないかもしれない。
「アルの学生時代……そうだな。変わった奴だったぞ」
「ルイ、余計な事を話さないでください。ルナさんも、なんでそんな事聞くのですか」
「単なる興味です」
「はっ。いい機械人形じゃないか、なあ? アル」
「まったく……貴方達は」
「面白いな。いいだろう、話してやるよ」
 そういって男は話し出した。

「こいつはな、昔っから人間嫌いだったよ」
「潔癖症ですか?」
「まあ、そんなものか。女も男も、とにかく人が嫌いだった。孤立してたな」
「仕方ないでしょう。嫌なものは嫌なんですから」
「こんな顔だが女にはよく話しかけられていた」
「悉く無視しましたけどね」
 昔からマスターは潔癖症だったのか。というよりは人間嫌い。
「しかも、昔はこいつ、自分の事を僕と言っていた」
「僕、ですか?」
「ああ。気が付いたら私になってるな。いつからだ?」
「さあ? 戦争後じゃないですかね? 処世術ですよ」
 学生時代は、僕といっていたらしい。マスターなら、似合う気もするが。
 主といい、マスターといい、昔の人は僕という人が多かったのだろうか。
「学校とは、どのようなものだったのですか?」
「ん? 機械人形の製作法などを学ぶ所だ。専門学だな」
「教諭は下衆でしたけど、内容は役に立ちましたよ」
 誰が教えても、いいものは変わらないということなのだろうか。
「お二人は、いつから知り合いになったのですか?」
「私は知り合いとしか認めていませんからね?」
「ひどいな。俺がこいつに付きまとってたからな」
「付きまとう……ですか」
「そうですよ。貴方と来たら毎日毎日――大した用もないのにくっついてきて。
 目障りで仕方ありませんでしたよ。まるでストーカーのようでした」
 さっきのストーカーと言われていたのは、それが原因らしい。
「どうして追いかけていたのですか?」
「珍しい奴がいると思ったからな。興味が沸いた」
「だからといって、付き纏わないでくださいよ。はっきり言って迷惑です」
「お前が逃げるからいけないんだろうが」
「無言で追いかけられたら、誰だって逃げます。ねえ、ルナさん?」
「訳がわからないので、とりあえず逃げますね」
「なんだ。主に忠実な人形だな、つまらない」
「人の人形を侮辱しないでくれると嬉しいですね」
 話が毎回ずれていくのは、私の気のせいなのだろうか。
 ああ、そういえば、と男は思い出したように手を打った。
「人形といえば、アレがあったな」
「なんです、いきなり」
「俺の左目」
 男の、左眼? 眼帯に包まれているが、何かあったのだろうか。
 マスターは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
 あまり思い出したくないことなのだろうか。
「確か、何かの課題で人形を作れというのがあってな」
「機械人形を、ですか?」
「はい。人形の出来が評価に繋がるのですよ」
「そうそう。必死になって作った覚えがある」
「ええ、貴方のせいでぶち壊しになりましたけどね?」
「まだ根に持ってるのか。あの時は悪かったって」
「よくも完膚なきまでに壊してくれましたね」
「お前だってやり返しただろう」
「当たり前です」
「あの……よろしければ詳細を」
 話が二人の間だけで進んでいる。
 何が起こったのかいまいちよく把握できていない。置いてかれている。
「そうだったな。課題で、人形を作っていたんだよ、とにかく」
 じろりとマスターが男を睨み付けている。
 殺意すら感じられそうな程に、鋭い目つき。
「それで、どうしたのですか?」
「俺が、アルの人形を壊した」
「ルイ様が、マスターの人形を?」
 そうですよ、と会話にマスターが加わった。
「私の作った人形を、修復不可能な程に、ルイが壊したんです」
 人の作った人形を壊す。それは……恐ろしい気がする。
 作り手にとって、製作物には愛着があるという。
 それを壊すとは、この男は凄いと思う。
「何故、壊したのですか、ルイ様?」
「明確な理由はない。強いて言えば、嫉妬だろう」
「嫉妬? ですか」
「こいつの方が、腕も頭も俺よりよかったからな、羨ましかったんだろう」
「嫉妬なんてくだらない理由で、人形を壊された私の身にもなってくださいよ」
「いいじゃないか。お前だって結局は俺にしただろう」
「やられたら、やりかえすのが信条ですから」
「貴方が壊しすぎるのがいけないのですよ。無事だったのは、歯車ぐらいでしたよ」
「確か、色付きだったな」
「ええ。紅の歯車でした」
 紅い歯車。寄寓にも、その壊された人形は、私と同じ色の歯車だったらしい。
 だが、それよりも気になることが。
「それで、何かあったのですか?」
 ああ、と男が紅茶を飲みながら言う。
「大いにあったな。あれは忘れられないぞ」
「…………」
 無言のマスターが怖いのですが……何があったのでしょう。
「俺はその後、こいつに呼び出されてな。放課後に、特別教室にな。
 そこで、何があったと思う?」
「怒られたのではないですか」
「まあ、怒られるだけの方が正直マシだな」
 すっとマスターの方を見ながら男は続けた。
「アルは、俺の左目を抉ったんだ」
「――っ、左目を、ですか?」
「ああ。その指で、綺麗に抉り取ってたよ」
 無意識の内に男の眼帯を見てしまう。
 眼帯の下には、空洞が広がっているのだろう。
「あれは、痛かったぞ」
「当たり前です。痛みを感じなければ、化け物じゃないですか」
 ぶすっとした顔でマスターは言う。
 昔から、マスターなりのルールがあったようだ。
「それで……その後は?」
「当然問題になってな。こいつは退学にさせられたよ」
「元々、興味などはなかったですからね、清清しましたよ」
 それなのに、とマスターはため息をついた。
「ルイときたら、何故か追っかけてきましてね。学校を退学してまで」
 なんというか、本当にストーカーのような男だ。
 ストーカーというのは、粘着質でしつこいと本に書いてあった。
「しかも、私の仕事の妨害ばかりするのですよ」
「ああ……使いをやったこともあったな」
「刺客か、スパイの間違いでしょう、まったく」
 それは、マスターを殺そうとしたのだろうか。
 それならば、あまり歓迎するべき客ではないのだが、私にとっては。
 私は無言で男を見た。
 捕らえどころのないような雰囲気だが、これがすべてではないだろう。
 簡単に言うと、腹黒いというような。
「お互い様だろう。俺だって死に掛けたぞ」
「貴方が弱いだけでしょう」
「何も戦争中に送ることないだろうが」
「それだけ、うんざりしていたという事ですよ」
 戦争中というのは、歯車戦争のことだろうか。
「そういえば、お前戦争中は何してたんだ? 見当たらなかったが」
「物騒な事に巻き込まれたくないので、隠れていましたよ」
「ルイ様は、何をしていたのですか?」
「俺か。俺は戦争に使われる機械人形を作っていた。ひたすらな」
 作っては壊されて、壊されたものを集めて、また作って。
 愛着というものなど、沸く暇がないのかもしれない。
 この男も人形を作るという。ならば、私のようなのはいるのだろうか。
「ところでルイ、貴方今は人形を作っているのですか?」
 男はすぐに首を左右に振った。
「いや。今は作っていないな。前に、一体だけ作ったきりだ」
「どのようなのを作ったのですか?」
「そうだな。かわいいというか、ぼけているというか……
 家事が出来るのが、唯一の救いだな。戦闘もそれなりにこなせるが」
「おやまあ。貴方が主では可哀想ですねえ」
「お前の下にいる人形も、ある意味では大変だと思うが」
「貴方ほどではないですよ。共に暮らしているのですか?」
「面倒だから、首輪だけつけて、放し飼いにしてある」
「放置してるんですね」
「放任主義といってもらいたい」
 なんというか、この男の下にいる人形も、色々と大変そうだ。
 私は別に苦労をしているとは感じないけれど。
 やはり、人間が一番恐ろしいのだろうか。
 軽く頭の中を整理しながら、時計を見た。
 時刻は、もうじき夕方になろうとしていた。
 やはり険悪だとはいえ、一応は知り合いだからだろうか。
 話が弾んでいたようだ。
「マスター、着替えてきますね」
「ああ、もうそんな時間ですか」
「着替え?」
 首を傾げている男は置いて、私は着替えに行く。
 あまり時間を掛けたくないので、手早く済ませる。
 戻ると、男が驚いた顔をしていた。
「随分と早いな」
「貴方と違って、彼女は無駄がないんですよ。優秀ですから」
「ひどい言い様だな、さっきから」
「では、仕事に行ってきますね」
「はい。行ってらっしゃい」
 私は、事務所を後にした。

 機械人形がいなくなった部屋は、不気味な空気に支配された。
「へえ、仕事……ね。何やってるんだ?」
「そうですね、掃除ですよ、ゴミ掃除」
「潔癖症のお前らしいな」
「失礼な」
 ルイが足を組みなおし、アルの方を見た。
 鋭い視線を銀髪の男は真っ直ぐに見返した。
「それで、貴方の本題はなんですか? 様子見だけじゃないでしょう」
「まさか。俺はお前の様子を見に来た。まあ、それ以外にもあるがな」
 ルイはアルの目の前で、腕を組んだ。
「どうだ、俺と仕事をしないか?」
「断ります」
 間髪いれずに、アルは即答をした。
「こんな場所など捨てて、いくらでも仕事はあるぞ」
「だから、貴方となんてお断りだと言っているのですよ。理解できませんか」
 意外に頑固だな……といいながら、ルイはなおも続けた。
「何がお前を此処に繋ぎ止めている?」
「貴方には、関係のない話ですよ」
 心底嫌そうにしながら、アルは言った。
「なら、その糸解いてやろうか?」
 愉快そうに笑いながら、ルイは言う。
「余計なお節介は結構ですよ。また貴方は私のものを壊すのですか?」
「さあな? 俺は壊さない。掻き乱すだけだ」
「どちらも似たようなものでしょう。結末には終わりしかない」
「俺は壊すだけだ。終わりを齎すのは俺じゃない」
 そこでいったん言葉を切って、また続ける。
「終わらせるのは、お前自身だ。いつだって、な」
「貴方が壊すのがいけないのでしょう」
「壊れたら、直せばいいだけだろう?」
「修復不可能にするのは、どちら様ですかね」
「相変わらず、いい性格だな、アル」
「貴方こそ……ね。ルイ」
 苦々しい表情をしながらも、アルは窓の外を眺めた。
「そろそろ、帰ったらどうです? 直に夜ですよ」
「ああ。いい加減帰るとするかな」
「他の場所へ行くのですか?」
「なんだ、泊めてくれるのか?」
「ふざけないでください。ストーカーなんか泊めるはずないでしょう」
「まあ、予測はついたがな。街の宿屋にしばらくはいる。用があったら来い」
「一生ないでしょうね」
「手厳しいことで」
「それはどうも」
 さあ、といいながらルイを追い払うような仕草をするアル。
「それじゃあ、また、な」
「二度と会いたくはありませんがね、そうもいかないでしょう」
 こうして、闖入者は事務所を去った。

 
 back  next